母の日の週末、ボデガ・ベイを訪れた後、サンフランシスコにあるビクトリア様式のブティックホテル「クイーン・アン・ホテル」に宿泊しました。このホテルは、かつて女子の寄宿学校として建てられた歴史的な建物で、サンフランシスコのジャパンタウンから数ブロックの場所に位置しています。同じくビクトリア時代建築のサンディエゴの高級ホテル「ホテル・デル・コロナド」と同時期に建てられた建築物で、ニッチで珍しいもの好きの人が好む雰囲気を持っています。
歴史的背景と建築様式
クイーン・アン・ホテルは、1890年に建てられたビクトリア様式の建物で、当初は女子の寄宿学校として使用されていました。この建物は、サンフランシスコのゴールドラッシュ時代の富を背景に建てられ、当時の上流階級の子女たちが学ぶ場として利用されていました。建物の外観は、クイーン・アン様式(英語)の特徴である非対称のデザイン、装飾、塔やバルコニーなどが見られ、内装も当時の雰囲気を再現しています。
この建物は、1906年のサンフランシスコ地震を奇跡的に生き延び、現在もその美しい姿を保っています。寄宿学校は財政的な困難により、学校は1896年に閉鎖されました 。その後、一時期は教会の管理者によって所有され、また別の時期には秘密結社の集会所としても利用されていたとされています 。秘密結社って…!?
1998年にはホテルとして改装され、ビクトリア時代の雰囲気を感じられる宿泊施設として人気を集めています。
宿泊体験とホテルの雰囲気
ホテルのエントランスには、西海岸の古い建物でよく見られるタイルが敷き詰められており、ロビーはビクトリア時代の雰囲気を感じさせる装飾が施されています。当時の電話とブースが残っていたり、エレベーターには子女がコルセットで息苦しい中、座れる椅子が設置されていたりと、歴史好きにはたまらない要素が満載です。
ただし、高級感をあまり感じられなかった点もありました。天井のパイプ群が剥き出しだったことや、全体的に照明が少し白っぽく、オレンジや暖色系の高級感を感じられなかったこと。部屋に入ったとたん、カビの匂いがしたことなどが挙げられます。サンタクルーズに住んでいた頃、敷地内にあった大家さんの家の同時期に建てられたビクトリア建築のお屋敷ではこういった匂いはしませんでした。メンテナンスが悪かったのか、サンフランシスコの湿気の影響かもしれません。
心霊現象の噂と410号室
このホテルは、心霊ホテルとしても名高く、特に410号室は有名です。私は霊感などこれっぽっちもないので、何も感じませんでしたが、宿泊客の中には、元校長のメアリー・レイクの幽霊が現れると語る人もいます。彼女はこの部屋で亡くなったとされ、現在もこの部屋に宿泊すると、彼女の存在を感じることがあるそうです。
赤ちゃんとの初めての宿泊体験
4ヶ月の赤ちゃんにとって、人生初のお泊まりの場所となったホテル。ベビーベッドを頼んだところ、1940年代の病院のベッドのようなものでした。違う意味で、他の時代の歴史も感じられました。人生初のホテルが心霊ホテルとは…親の歴史好きが高じて迷惑だったかもしれませんね。
朝食とサービス
朝食込みだったので、翌朝朝食をとりに1階ロビー横にある会場へ。驚くほど質素だったので驚愕しました。ブティックホテルだからしょうがないか…と思いましたが、タンパク質はゆで卵のみ。他にベーグルやイングリッシュマフィン、グラノーラなどがありました。意外だったのが、自分で焼けるワッフル。ワッフル生地を機械で出して各自焼くというもので、結構いけましたよ!
まとめ:時代の記憶を宿す空間で、家族と過ごす特別なひととき
ボデガ・ベイの荒々しくも美しい海岸線から、サンフランシスコの歴史深いクイーン・アン・ホテルへと続いた、母の日の小旅行。
ただの観光ではなく、訪れる場所一つひとつに歴史や文化が息づいており、それを肌で感じながら家族と過ごせたことは、何よりの贈り物でした。
かつては上流階級の子女が通った寄宿学校だったこのホテルは、時代を超えて今日も訪れる人々を迎え入れています。
壁にしみ込んだ記憶のような静けさと、アンティーク家具や細部に残るビクトリア時代の意匠。
現代的な快適さとは少し違うけれど、だからこそ体験できる「時を旅するような宿泊体験」が、ここにはありました。
我が子にとっては人生初のお泊まりが、偶然にも歴史とロマン、ちょっぴりミステリアスな雰囲気漂うこのホテルだったこと。
きっと将来、「あなたは生後4か月で心霊ホテルに泊まったんだよ」なんて笑い話になるかも!
これからも、ただ行き先を決めるのではなく、そこにある背景や物語にも目を向けながら旅をしていきたい。
そんな思いを強くした今回の母の日旅でした。