今年の母の日、私にとっては「母として迎える初めての記念日」でした。何気なく過ごす予定だった週末に、夫が計画してくれた小旅行。
向かった先は、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作『鳥(The Birds)』の舞台として知られるBodega Bay(ボデガベイ)と、サンフランシスコにある歴史的なビクトリアン様式のホテル。どちらも初めて訪れる場所でありながら、どこか懐かしく心が落ち着く旅となりました。
この記事では、旅の様子に加え、訪れた町の歴史や見どころ、食レポなどを交えながら詳しくお届けします。これから北カリフォルニア方面への旅行を考えている方の参考になれば嬉しいです。
ボデガベイとは?ヒッチコック映画の舞台と自然が融合する小さな港町
ボデガベイは、サンフランシスコから車で北へ約2時間ほど。ゴールデンゲートブリッジを渡り、内陸のペタルマ(Petaluma)を経由して丘を越えた先にある、小さな港町です。太平洋に面した入り江で、漁業が盛んな地域としても知られています。
映画「鳥」の舞台
この町が一躍有名になったのは、1963年に公開されたヒッチコックの代表作『鳥』のロケ地として使われたことがきっかけです。映画の中では、平穏だった町が突然、鳥たちの異常な行動に襲われていくというスリリングなストーリーが描かれています。
映画の印象が強すぎて、「荒涼としていて怖い場所では?」と思われがちですが、実際にはのんびりとした雰囲気の漂う美しい町。自然が豊かで、海の香りと潮風が心地よく、都会の喧騒を忘れさせてくれます。
【ランチ】The Tides Wharf & Restaurantで海の幸を堪能
到着してまず訪れたのは、The Tides Wharf & Restaurant 。海を望む絶景のロケーションで、映画にも登場した場所。観光客にも地元民にも人気のシーフードレストランです。
注文したメニュー
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イカのヴィネグレットサラダ
→ 酸味のあるドレッシングとプリプリのイカが絶妙。ただ、以前ナパ・バレーの「V. Sattui Winery」のデリで食べた同じようなサラダのほうが、私の好みに合っていました。 -
クラム・チョッピーノ(Clam Cioppino)
→ チョッピーノとは、サンフランシスコ発祥の魚介シチュー。19世紀後半、イタリア系移民の漁師たちが広めた料理で、冷蔵保存が難しかった当時の魚介類を無駄なく使う知恵から生まれたそうです。 -
夫のフィッシュ&チップス
→ 定番ながら外れのない味。サクサク衣とふんわり白身魚が絶妙のバランス。
レストランの雰囲気
大きな窓からはボデガベイの海が見渡せ、落ち着いた時間を過ごせます。映画のポスターや写真が飾られていて、ヒッチコックファンなら思わず見入ってしまうはず。レストラン内では映画『鳥』のDVDが上映されていて、懐かしい雰囲気に浸れました。
観光地化が進んだボデガベイ|昔の漁村の面影はどこへ?
ボデガベイは、もともとはサーモンやカニ漁でにぎわっていた漁師町。1970年代頃までは、漁船が行き交う光景が日常だったそうです。
しかし現在では、観光業が主産業になっています。週末にはサンフランシスコからの観光客が多く訪れ、レストランやギフトショップ、アートギャラリー、宿泊施設が所狭しと立ち並びます。
道路は1車線のみのくねくね道が多く、アクセスには少し苦労しますが、その分「秘境感」があり、非日常を味わえます。サンタクルーズと似ている部分もありますが、規模はかなり小さく、観光地化されたとはいえまだまだ素朴な雰囲気が残っています。
車で10分、映画の舞台「ボデガの町」へ|歴史とノスタルジーを感じるひととき
ランチ後は、映画の舞台として有名なBodega(ボデガ)の町へ。
ボデガの歴史
ボデガは、19世紀初頭にロシアの毛皮商人がこの地域に拠点を置いたことに始まりました。1820年代には製材業と農業で発展し、のちにアメリカ人入植者により学校や教会が建設され、コミュニティが形成されました。現在は人口数百人の小さな町ですが、当時の建物の多くが保存されており、歴史的価値の高いエリアとされています。
『鳥』のロケ地巡り|小学校と教会
小学校
映画の印象的なシーンに登場する小学校は、今もその姿を残していますが、現在は私有地となっており、立ち入りはできません。ただし外から見学することは可能で、木造の建物の趣や当時の雰囲気は健在です。
セント・テレサ・オブ・アビラ教会(St. Teresa of Avila Church)
隣にはカトリック教会があります。こぢんまりとした白い教会で、映画にも登場した場所。私たちが訪れた時には、ちょうどミサの直前で、中に入って見学することができました。
内部は質素ながら温かみがあり、木の香りと柔らかな自然光が漂う、心安らぐ空間。観光地でありながらも神聖さを保っておりました。
なぜカトリック教会?
この教会は1860年に建設されたローマ・カトリック教会で、ソノマ郡で最も古くから継続的に使用されている教会です。この教会がカトリックである理由は、主にアイルランド系移民の影響によるもの。19世紀半ば、アイルランドでは英国のプロテスタント支配下で宗教的迫害があり、多くのカトリック教徒が新天地を求めてアメリカに移住しました。カリフォルニアはかつてメキシコのカトリック支配下にあったため、アイルランド系移民にとって魅力的な移住先となりました。
教会の建設には、ニューヨーク出身の船大工たちが関わり、ジャスパー・オファレル(Jasper O’Farrell)によって寄贈された土地に建てられました。オファレルはダブリン出身のアイルランド系移民で、サンフランシスコの都市計画にも関与した人物です。彼の家族や地域のカトリック教徒のために、教会の建設が進められました。
そしてこの教会は1861年にアレマニー大司教によって献堂され、地域のカトリック教徒の信仰の中心となりました。その後、イタリアやスイスのティチーノ地方からの移民も加わり、地域のカトリック人口が増加しました。1872年には教会の拡張が行われ、現在の姿となりました。
このように、ボデガの教会がカトリックである背景には、アイルランド系移民を中心としたカトリック教徒の移住と、彼らの信仰を支えるための地域社会の形成が大きく関与しているんですね。
サンフランシスコのヴィクトリアンホテルへ|歴史を感じる宿泊体験
ボデガ観光を終えた私たちは、車を再び南へ走らせてサンフランシスコへ。この日の宿泊先は、歴史あるヴィクトリアン様式のブティックホテルでした。
サンフランシスコとビクトリアン建築
19世紀後半から20世紀初頭にかけて建てられた、装飾が美しい木造の家々が「ビクトリアン建築」として知られています。中でも「Painted Ladies(ペインテッド・レディース)」と呼ばれる、アラモ・スクエアの並びは有名です。
私たちが泊まったホテルも、当時の建築をそのまま利用したもので、木製の重厚な扉やらせん階段、アンティークのシャンデリアなど、まるで19世紀にタイムスリップしたかのような雰囲気。旅の締めくくりにふさわしい、格別な夜になりました。
まとめ|母としての一歩を刻む、大切な旅の記録
この旅を通して感じたのは、「新しい自分を受け入れる時間の大切さ」でした。母になったばかりで、日々の慌ただしさに追われていた中、自分のために時間を持てたことはかけがえのない経験。
ヒッチコックの舞台を巡るノスタルジックな町と、自然の静けさ、そして歴史的な空間での滞在。すべてが今の私の心を優しく包み込んでくれるような時間でした。
旅のおすすめポイントまとめ
項目 | 内容 |
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アクセス | サンフランシスコから車で約2時間。レンタカー推奨。 |
おすすめスポット | INN AT THE TIDES、ボデガの教会と小学校 |
食事 | シーフードが豊富。チョッピーノは名物料理。 |
注意点 | 小学校は私有地につき立ち入り禁止。教会はミサ中の訪問は避けましょう。 |
宿泊 | サンフランシスコのヴィクトリアンホテルで非日常を体験 |
最後に
この記念すべき初めての母の日が、ただのお祝いではなく、心のリセットと未来への第一歩となったように感じます。これからも「旅」を通して、日々を丁寧に味わっていけたら…。そう思わせてくれた、大切な2日間でした。
次の記事では、今回宿泊したサンフランシスコのビクトリアンホテルの魅力を徹底解剖します!